~デジタル田園都市国家構想の実例紹介 第1回~
南海トラフ巨大地震に備える! 年間300万人の観光客が訪れる
和歌山県白浜町が目指す観光防災マップとは
和歌山県南部に位置する白浜町は温泉と石英砂の海岸で知られ、面積約200㎢、人口2万人ほどの町に年間300万人の観光客が訪れるリゾートタウンです。他県にある白浜と区別するため、紀伊半島や旧紀伊国の南を意味する「南紀」を冠して「南紀白浜」と呼ばれることもあります。
海岸線に面しており、南海トラフ巨大地震の津波被害想定エリアに入る白浜町が取り組む観光防災マップについて、白浜町役場 総務課企画政策係 鎌谷 隆志さんにお話しを伺いました。
【自分が観光地を訪れた時に、わざわざ防災マップを確認するだろうか?】
―自治体が作る防災マップで、対象が観光客というのは珍しい事例だと思いますが、観光防災マップを制作するに至った経緯を教えてください。
白浜町は年間300万人が訪れる観光の町で、海岸線に面しています。近年、南海トラフ巨大地震発生が想定される中、白浜町は津波浸水被害の想定エリアに入ります。町としては住民の安全は当然ですが、有事の際に観光客の安全についての課題が常にあります。
防災マップを用意するとなった時に、自分が他の観光地へ行った場合、果たして防災マップを見るだろうか? と考えました。私自身も含めてほとんどの方がまず遊ぶ場所や食べる場所を調べると思います。
―言われてみると、確かに旅行先でいちいち防災マップを確認しません。
よほど意識をしていないと防災マップを見ることはありませんし、災害が起こった場合などは気持ちに余裕がありませんので、土地勘が無い場所で紙やPDFの地図を見ても、自分がいる場所は危険なのか、どの方向に逃げればいいのか、一時避難場所はどこなのかわからないと思います。
観光防災マップの詳細な仕様については構築段階ですが、観光地の情報と、津波の浸水ハザードの浸水具合を重ねられるようにしてほしいという希望を出して発注しています。例えばレイヤーで通常は観光マップが表示されますが、[防災]の表示を押すと防災マップになり、「現在地は浸水想定エリアかどうか」「どちらの方角に浸水想定エリアではない場所があるか」がわかる地図が表示される仕組みを予定しています。
浸水エリアや避難場所などが可視化されることにより土地勘がなくてもスムーズに初期避難できるようなマップを作りたい、ということが発端でした。
また、アプリをダウンロードして使う仕様にはしません。旅行先のマップアプリをいちいちダウンロードするのは面倒ですし、災害時にダウンロードしなければ使えないとなると、そのひと手間をかけることで避難が遅れてしまいます。WebサイトもしくはWebアプリになるように発注しています。
― それではデジタル田園都市国家構想の申請はまさにうってつけだったのですね。
デジタル田園都市国家構想の骨格が示された時から3Dマップなどを観光や防災に活かせないかとの漠然とした構想はありましたが、具体化されていない段階でデジタル田園都市国家構想推進交付金の案内が来たといった状況でした。町として交付金を申請するとの判断となり、その時点から具体的な構成を行いましたので、かなりタイトなスケジュール感でした。