~デジタル田園都市国家構想の実例紹介_第2回~
少子高齢化・人口減少・雪害・水害…、山積する課題を、IoTプラットフォームを活用して「マンパワーが不足する状態になっても、持続可能なまちの実現」へ
魚津市は、日本のほぼ中央に位置する富山県の北東部にあり、県都富山市から車で30分ほどの場所にある人口約4万人の都市です。富山湾に面した平野部から2000m級の山岳地帯まで一気に標高が上がる独特の地形で、その地形からは清涼な水や自然の恵みが生み出されていますが、一方で、急流で流域面積が小さいことから河川の反乱による水害の危険性や、北陸地方特有の湿った重い雪による雪害など防災の課題があります。
また人口減少や少子高齢化問題が急激に進んでいる地域でもあります。様々な課題に日々取り組んでいる魚津市役所 企画政策課未来戦略室 込山翔様にお話しを伺いました。
◎魚津市役所 企画政策課未来戦略室 込山翔 様◎
社会福祉課介護保険係、総務課情報政策係、企画政策課企画係を経て、現在は「スマートシティの構築」「ゼロカーボンシティへの挑戦」「SDGsの推進」を実現するために、新たに市役所内に設けられた特命チームである企画政策課未来戦略室所属。市内外の様々な場所へ自ら出向き、市役所に対する厳しいご意見をあえて伺い、未来戦略室として課題解決に向けて取り組んでいる。
【人口減少・少子高齢化はそのまま雪害・水害などの「防災を担う人手不足となる」からこそ、デジタル化で問題解決!】
― 「防災分野におけるIoTプラットフォームを活用したデータ利活用の推進事業」としてデジタル田園都市国家構想の申請をされた経緯を教えてください。
魚津市は富山湾に面した平野部から2000m級の山岳地帯まで一気に標高が上がる独特の地形により、水源から河口までの距離が近く、急流で流域面積が小さいため河川氾濫の危険性があります。市内には多数の排水路や用水路、準用河川があり、それらの狭窄部や合流部等では排水不良による氾濫や浸水災害が多く見られ、近年の集中豪雨では都市型の浸水被害の可能性も高まってきました。
水害だけでなく、雪害もあります。今年1月には全国ニュースにもなりましたが、気象条件によっては局地的に大雪となる傾向もあります。更に、魚津市に降る雪は北陸地方特有の湿った重い雪ということもあり、交通障害により住民生活へ多大な影響が発生します。
更に、人口減少のスピードが加速しており、2060年には、魚津市の人口は今(約40,000人)よりもおおよそ18,000人減少し、22,000人程度になると予想されております。少子高齢化の影響を大きく受け、地域経済の縮小や担い手不足などに直面しておりますが、それは防災にも同じことが言えます。
そのため、「マンパワーが不足しても住民が安心して暮らせるまち」を目指し、子どもや孫、その先の世代に「希望の持てる未来」を創っていきたいと様々な可能性を模索しています。その中で、IoTプラットフォーム(データ連携基盤)と呼ばれるものの構築に興味を持ち、デジタル田園都市国家構想のお話しがある以前から情報収集を進めていました。
― IoTプラットフォームをどのように活用されていらっしゃいますか。
魚津市内にセンサーやカメラを設置し、例えば雪害においては、積雪の情報を把握するために「現在の雪の深さは〇cmです」と測るセンサーや、積雪の状況を確認するカメラを、気象庁や国、県が設置しているものの他に、魚津市がピンポイントで見たいところに設置しています。
水害対策では河川の水位の状況を把握するために、河川水位を測るためのセンサーを設置しています。他にも、除雪車の位置情報をはかるGPSのデバイス機能を除雪車やゴミ収集車に載せています。
設置した各種ICTデバイスからデータをIoTプラットフォームに集積し、分析ができる環境を構築しています。分析したデータを地図やグラフでわかりやすく表示する機能を搭載して、魚津市の現状を見える化します。そして行政をはじめ、地域住民や民間企業、教育機関等が、魚津市の状態をリアルタイムで知ることで、地域課題の解決や活性化に繋がるツールとして活用して頂ければと思っています。