~防災のDX化実例紹介~ 

地方にドローンを根付かせ、災害にも役立てる仕組みづくり

第1回 防災・地域の課題をデザインする必要性

 

近年、多発する地震や豪雨災害、そして予測される南海トラフ巨大地震。防災の分野でもDX化が進み様々な防災訓練が行われていますが、発災直後の混乱する現場では想定していた活用方法が機能しない場合が多いと言われています。

EDAC理事長の稲田は、熊本地震・令和2年7月豪雨では熊本在住であるため、ドローンパイロットとして様々な現地の要望に対応しました。その時に現場では何が起こっていたのか? その経験を活かし、実際に活用されるための準備とはどういうことなのか? 2022年12月に開催されたEDACのセミナーの講演内容を元に、「熊本地震の体験」「南小国町での実装の内容」「令和2年7月豪雨での成果」と、3回にわたってお届けします。

第1回は熊本地震の体験を中心に、災害現場で実際に何が起きていたのかをお伝えします。

 

◎ 一般社団法人EDAC 理事長 稲田悠樹 ◎

熊本県在住。2015年脱サラしドローン事業開始。2016年熊本地震、2020年令和2年7月豪雨の現場を経験。ドローンを使った災害調査に参加した経験を活かし、遠隔情報共有システム「Hec-Eye(ヘックアイ)」を監修。自治体を中心に、平時からドローンの活用を提唱する。ドローン関連書籍の執筆多数、NHKにっぽん百名山をはじめTV番組制作参加、企業のPR映像など、ドローン関連システム企画、監修およびテストパイロットと活動は多岐に渡る。

 

熊本県南小国町イメージ画像

 

 

防災・地域の課題をデザインする必要性とは?

 

― はじめに

EDACはドローンをはじめとしたIoTやICT等の最先端テクノロジーを救急救命や災害対応等の現場で活用することで「救える命を救える社会」の実現を目指しています。

私自身、2016年の熊本地震と2020年の令和2年7月豪雨では、両災害ともドローンパイロットとして現場に入っています。熊本地震の体験と、その過程で「平時から使用していないモノは有事に活用できない」という経験をしたことで、一層「地域実装」の大切さを実感いたしました。その経験を元に南小国町と一緒に平時活用の結果、有事に役立つという実装を進めています。

 

 

― 日常の活動の中でのつながり

現在、EDACの理事長をさせて頂いていますが、自身が経営する(株)コマンドディーではドローンを使った撮影、ドローン関連のシステム開発、監修、テストパイロットなど、一般的なドローン事業をしています。

 

また、BRIDGE KUMAMOTOという組織では地元のデザイナーやクリエーターと一緒に、社会課題をどのようにデザインするか、という活動も行っています。活動の一例として、被災地域などで使用された廃棄予定のブルーシートを回収・洗浄・縫製して、トートバッグにリメイクしました。売上を災害支援団体等に寄付などを行なっています。

 

他に一般社団法人熊本県ドローン産業推進協議会の副会長もしており、県内の事業者の方々と様々な活動も行っています。

日頃はドローンを軸に災害関連も含め多方面で活動していますが、その繋がりが実は災害時に大きな助けになることも、実例を挙げながらお伝えしていきます。

 

 

― 「地域の課題をデザインする」ということとは

現在、地方の課題解決や防災のDX化が急速に進んでいます。例えばドローンを使う場合ですが、テクノロジー、地方の課題、そしてデザインという3つの要素を私は取り入れます。

「デザイン」というと、ビジュアルやクリエイティブをイメージされる方が多いと思いますが、英語では「計画」という意味も含まれています。

ドローンも含めた技術やモノですが、導入されても地方の課題にはまっていない場合は、無駄になってしまうこともあります。私が言うところの「デザイン」とは導入の計画ですね。「モノ」「課題」「システム」をどうしていくかを全て考えてデザインすることです。

 

 

― なぜ課題をデザインすることが大切なのか

例えばドローンなどの災害協定ですが、日本中にあります。特に中山間地域などはどうしてもドローンは必要ですが、協定を結ぶことにとどまっていて、協定を結んだ先が被災することを想定していないな、と感じています。

担当の方にも生活がありますし、その方が動きやすいかどうかは考慮されていません。そのことを想定せず、一つだけに依存しているような状況です。

 

また、新しいシステムを導入した場合にもおこりうるパターンとして、担当の方に負担がかかりすぎることが多々あります。地方であればあるほど、どうしてもドローンやテクノロジーなどに詳しくない方が多い状況です。

情報としてドローンを知っていても実際に見たことがない方たちの「ああしたらいい」「こうしたらいい」という意見に振り回されて、担当の方がだんだん心が折れていきモチベーションが低くなっていくということがよくあります。

 

そのような状況がおこりうる場合も見据えて、詳しくない多くの人数で、いかに負担を少なくして現場を回していけるようにするか。導入する際に「モノ」「課題」「システム」をどう使っていくかをデザインしています。