~デジタル田園都市国家構想の実例紹介_第5回~

地域づくり支援プラットフォームを活用した双方向防災事業のため、全世帯にタブレット配布! 人口約530人の村が取り組むデジタル化

 

 丹波山村は、山梨県の北東部県境、北都留郡の北西端に位置し、多摩川の源流、丹波川と雲取山、飛龍山、大菩薩嶺など険しい山々に囲まれた自然が豊かで、人口は約530人の村です。秩父山地を境に埼玉県や東京都と接し、南は妙見鹿倉尾根を境に小菅村、西は大菩薩嶺を境に甲州市に接しています。いずれも標高1,000 m~2,000 m級の急峻な山であり、村の面積の約98%が森林です。その地形故に電波状況も決して良好とは言えない中でデジタル化に取り組む丹波山村役場・総務課地方創生推進室の舩木様にお話しを伺いました。

 

◎ 丹波山村役場・総務課 地方創生推進室 舩木様 ◎

 入庁以来総務課に所属して防災担等も経験し、現在は地域活性化に繋がる事業を中心に取り組む地方創生推進室にて、デジタル田園都市国家構想の申請を担当。防災システムの構築や更新をはじめ、村民のサポート等も含めデジタル化への移行に向けて日々取り組んでいる。

 

※「丹波山村風景」(画像提供:丹波山村)

 

村の面積の約98%が森林。急峻な山に囲まれた豊かな自然と災害警戒区域指定の地形

 

― まず、丹波山村(たばやまむら)の地理的な概要や地形の特徴などについて教えてください。

 丹波山村の位置ですが、山梨県の北東部に位置しており、東側が東京都の奥多摩町、北側が埼玉県の秩父市で、東京と埼玉との三角点に位置しています。人口は約530人ほどの小さな村で、関東地方(離島を除く)では人口が一番少ない自治体です。人口の約8割が「丹波地区」という場所に集中しており、他は数軒しかない地区や一軒家が点在しているという状況です。

 地形的な特徴ですが、面積の約98%が森林で、非常に急峻な山に囲まれている自治体です。そのため、一部に土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)がありますが、多くは土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)に指定されています。大雨や台風時には落石や土砂崩落が心配され、一定の雨量(連続雨量・80mm)で村の中央を通る国道(411号)が通行止めになります。

 

 

― 孤立しやすい地形ということでしょうか。

 いわゆる『陸の孤島』になりやすい地形です。急峻な山に囲まれた地形による災害の心配もありますが、豊かな自然は観光資源でもあります。

 

 

― サービス業の比率が高いのは観光でしょうか。

 おっしゃる通り観光業です。丹波山村は関東平野の裾野で東京方面に土地が開けていますし、比較的東京方面からのアクセスが良いため、来村されるほとんどの方が東京や神奈川方面からのお客様です。通過型観光がメインですが、県指定天然記念物の青岩鍾乳洞、キャンプ村、村営のつり場等、豊かな自然だからこその観光スポットも数多くあります。

 

 

 

山間地域特有の電波不感地帯にも対応できるシステムを選択!

 

― 今回、デジタル田園都市国家構想で申請された「地域づくり支援プラットフォームを活用した双方向防災事業」の経緯について教えてください。

 デジタル田園都市国家構想の申請の前に、令和3年度になりますが、総務省の「過疎地域持続的発展事業」という交付金の募集があり、採択されました。これはICT等技術の活用などによる地域課題に対応するためのソフト事業を行う過疎地域持続的発展支援事業(持続的発展支援事業)をはじめ、過疎地域の持続的発展を支援することを目的とした交付金です。タブレットを用いて地域の効率化をはかるという内容で申請して実証を始めたのですが、その時は全世帯にタブレットの配布ができる予算ではありませんでした。 改めて、令和4年度のデジタル田園都市国家構想の交付金を活用して、2023年2月に自治体の全世帯にタブレットの無償貸与が完了しました。

 

 

― 全世帯に配布するのは、思い切った決断ですね。

 この全世帯に配布する背景の一つに、防災無線の存在があります。平成20年代になり、アナログ防災無線からデジタル防災無線への移行を求められるようになりました。現在、丹波山村ではアナログの防災無線を使用しており、防災無線の戸別受信機を各戸に配布しています。防災無線をデジタル化する際に戸別受信機を廃止して、今後は屋外のスピーカーやサイレンで緊急情報を放送するだけという訳にもいきません。先ほどもお話ししましたが、丹波山村は急峻な山に囲まれているという地形もありますし、季節によっても電波が受信できないという事情があります。

 

 

― 季節によって受信状況が変わるのですか?

 葉が生い茂っているかどうかでも、電波の受信状況は変わってきます。電波について詳しくはないのですが「0」「1」の世界らしく、少しだけ入るとかではないようです。防災無線の情報は命にかかわることですから、防災無線が届かない状況にならないようにしなければなりません。複数の試験を行った結果、携帯電話の電波は人が住んでいる地域に基本的に入りますので、タブレット端末で防災情報も受信が可能となりました。

 デジタル田園都市国家構想の申請内容からは逸脱しましたが、今回の交付金によって全世帯に配布したタブレットが、いわゆるアナログ防災無線の戸別受信機の代用にもなりますので、防災無線も同じタイミングでデジタル化へ移行することになりました。