EDAC 会報誌、「EDAC ドローン活用情報」は、不定期発行となります。全国の自治体およびEDAC会員に無料配布しております。
ドローンが描く地方の未来 –創刊のごあいさつに代えて EDAC のミッションとこれまでの活動について振り返る
一般社団法人EDAC 理事長 稲田 悠樹
ドローンパイロット。ドローン導入アドバイザーとして企業等へのドローン導入に関するアドバイスも行っている。
![](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2021/01/マスクグループ-1.png)
ドローンに対する認知が進んでいる一方、その活用方法はまだまだ発展途上といえる。そこで、ドローン活用の未来図について、ドローン黎明期から空撮活動やメディアの運営を行うなど普及促進に取り組んで来た一般社団法人EDAC 理事長の稲田悠樹氏に話を伺った。
ドローンをはじめとした最先端テクノロジーを救急救命や災害対応等の現場で活用
-まずは、改めてEDACの設立趣旨や活動内容についてお聞かせください。
EDACは「救える命を救える社会」の実現を目指し、ドローンをはじめとしたIoTやICT等の最先端テクノロジーを救急救命や災害対応等の現場で活用していくことを推進すべく、専門分野の異なる有志たちが集まり設立した一般社団法人です。 これまでに、ドローンをはじめとした最先端テクノロジーを災害発生時等の有事に活用することで、「救急・救助活動の効率化」や「救急救命・災害対応における消防力の最適化」を実現しようとする活動を展開して参りました。その活動の過程で得た「平時から使用していないモノは有事に活用できない」という知見を踏まえ、日常から活用できるシステムや運用体制を構築しようと、実証実験から地域実装までを包括的に支援しつつ、普及促進活動を手掛けております。
![総務省「救急医療・災害対応に おけるI oT 利活用モデル実証事 業」にて、ドローン活用により傷 病者発見から救助までの時間短縮 という成果をあげた](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2021/04/517b24899996676f12b342bd6e9a7062.jpg)
─具体的な活動について教えてください。
年次に沿って紹介しますと、2016年に一般社団法人として登記し、同年総務省の「平成27年度補正予算IoTサービス創出支援事業」の採択を受け、ドローン及びリモート映像転送システムを活用することで山岳にて遭難した傷病者の捜索活動を効率化できるかどうかの実証実験を行いました。そしてもう一つ、同年の大きなトピックとしては、4 月14 日に発生した熊本地震での活動です。実は私自身、熊本市に在住しており熊本地震を体験した当事者の一人です。数日間の車中泊を余儀なくされた私にも何かできることがあるはずと思い、友人たちと食料や物資を必要としている人へ届けるボランティア活動に取り組んでいた過程で、自治体・各種研究機関から「ドローンで被災状況の把握を行って欲しい」とのご依頼を頂き、地割れや土砂崩れ、倒壊等の被害状況調査を実施いたしました。
2017年度以降はシンポジウムやイベント開催、実証や普及促進セミナーの実施等、ドローン利活用推進に貢献できるような活動を行っておりました。大きなトピックとしては3点、JUTM 実証への参加と南小国町とのまちづくり協定締結、そしてドローン活用に関するシンポジウムが挙げられます。JUTM実証では、昨今関心の高いドローンの管制システムを構築すべく、福島県南相馬等の実証フィールドで行われたJUTM主催の航空管制実証実験へも参加させていただき、管制と連携した災害時の被害状況の把握及び人命捜索におけるドローンの運行を行いました。
また、熊本県阿蘇郡南小国町と協定を締結し、現在もドローンを活用したまちづくりを行っています。 そして、2017 年12 月にEDAC 主催で開催したドローン利活用に関するシンポジウムでは、大変有難いことに開催当日は総勢150名を超える来場者にお越しいただき、シンポジウムの内容について業界の皆様から様々なご反響を頂戴できました。シンポジウムの様子を記録した講演録『地方自治体のドローン活用事例とその未来像について』が現在もオンラインにて無料配布されているので、ぜひご覧いただけたらと思います。2018年は、引き続き南小国町でのドローンを活用したまちづくり事業のご支援をさせて頂きながら、大分県佐伯市にてドローンとリモート情報配信システムを活用した実証実験を行い、「実用」をテーマとした活動に注力して参りました。その他、大分県ドローン協議会及び、熊本県ドローン産業推進協議会との連携協定を結び、日常の活用及び災害等が発生した場合の迅速な対応を目指し、連携を進めております。
熊本地震での被災した経験をもとに
─熊本地震での被災経験がEDACやご自身の活動に大きく影響を与えた印象を受けました。
熊本地震では、私自身が被災者でもあったためドローン活用に関することだけでなく、ボランティアの在り方や、自分や家族、知人等の身を守ること、その他復興に関する課題等、様々な経験をしました。特にドローンについては、当時は法令や災害時に有効に活用された事例が少なく、ドローンを活用する受発注の体制も事前に整理されていないなかで撮影に至った例は少なかったのですが、その状況下においても現地の方々にご理解を頂きドローン空撮が実現できました。
撮影した映像をご覧頂いた方々からは「地震発生のメカニズムの研究に役立てられる」「将来的には、罹災証明の発行の簡略化の資料として使えるようになれば」「発生直後は、救急車が現場に行くまでの道がわからなかったため、迅速に飛ばすことができれば道の把握に役立てることができる」等、様々なご意見を頂戴することができました。こうした一連の活動から、震災前・震災後において、我々が役に立てることは決して少なくはないこと、そしてその経験をもとに自治体・医療機関・企業等が感じた課題を、元々の知識や技術と組み合わせて、より効率的により安全により迅速に行う取り組みを目指すことに繋がりました。
![熊本県南小国町と「ドローンを活用したまちづくりに関する協定書」締結の調 印式。左からEDAC理事長 稲田悠樹、熊本県南小国町 町長 高橋周二、 (株)リアルグローブ 代表取締役社長 大畑貴弘](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2021/04/21df9619673d86b3b025aa36fe82dec7.jpg)
南小国町との「ドローンを活用したまちづくり」
─先述頂きましたが、熊本県の南小国町と協定を結び、ドローン活用の推進を行われていらっしゃいます。展望も含めて詳しいお話をお聞かせください。
熊本地震以降、西日本豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震等様々な災害でドローンが活用される事例が増えてきました。その中で南小国町とご縁があり協定を締結し、ドローン等の活用を推進することとなりました。
元々は災害にて活用したいというお話でしたが、熊本地震を経験したことにより、「平時にできないことは、有事にはもっとできない」こと、災害時には新しい仕組みを構築する余裕がないことをお互いに肌で感じており、日常からのドローン活用を模索し、その経験をもって緊急時も活用することを目指すこととなりました。そしてドローン活用について協議するなかで、観光PR、鳥獣害対策、空き家対策、防災訓練での活用、危険箇所の把握、建設・土木、林業、農業、不法投棄の捜索等、外部パイロットに委託する部分と内部の役場職員が実際にドローンを飛行させて行う部分、というように運用業務について仕分けを行い、一つずつ検証しながら進めています。
これらの過程で得られる飛行技術・業務フローをシステムによって簡略化すること、情報伝達の仕組化等のノウハウは様々な分野に応用可能です。山間地域等において日常的に医薬品の運搬が可能になることは、すなわち災害時に橋や道路が断絶した際に空から医薬品を運搬できる技術が確立されている、ということになります。また鳥獣害対策としてイノシシやシカ等を発見・対処する技術は、緊急時に人を探すことへ応用できます。我々は、災害時だけではなく平時から、日常から、社会の課題を解決するためにドローン及びシステムの活用を実証から実装まで行い、その結果、緊急時も活用することができる状況を構築しております。
地方の未来像とそこに寄与するEDACの今後について
─最後に、EDACとして今後どのような活動を展開していくのでしょうか。
地方では若年層の都市部への流出や高齢化、過疎化を起因とする様々な課題が露になってきており、それら諸課題を解決しようと先端技術を活用する取り組みが拡がっています。また、ドローンを活用するにあたっては法規制の関係で都市部での活用はまだまだ難しい状況で、人口密集地が比較的少ない地方での活用が現実的です。
このような状況を踏まえ、ドローンの活用は地方からはじまっていくと確信しています。実際、地方でのドローン活用や実証実験に関するニュースを目にする機会が増えました。今後より一層、地方を起点としたドローン活用が進んでいくと考えておりますが、まだまだ社会的にドローンに対する理解を深めていただく取り組みが必要であり、運用体制の構築や人材の育成が課題であると考えております。
EDACとしては、ドローン活用が当たり前の社会と現在の社会とのギャップを少しずつ埋めていくべく、根気強く普及促進活動に取り組みながら、ドローン実用の知見やノウハウを蓄積し、社会に還元していけるような活動を手掛けていきます。
日本や世界が抱える課題を見つめ未来を見据えることも大事ですが、まずは“今”できることにフォーカスして最先端テクノロジーの活用により地方が抱える課題解決に資するべく、実証から実装、運用まで、包括的にご支援させていただく所存です。
(取材日/2019年1月11日)
一般社団法人 救急医療・災害対応無人機等自動支援
システム活用推進協議会(EDAC)
TEL / 03-5413-7398
MAIL / info@edac.jp
URL / https://www.edac.jp/
![](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2022/04/kaihoushi09.jpg)
vol.9
自治体の広域連携がもたらす 地域課題の解決、 未来技術の社会実装
東三河ドローン・リバー構想推進協議会
[インタビュー]
防災拠点整備とドローン物流で美郷町を災害に強く便利な町へ
島根県美郷町役場 情報・未来技術戦略課/漆谷 暢志
職員によるドローン橋梁点検“君津モデル”で市内の橋の安全を守る
千葉県君津市/建設部 道路整備課 齋藤 優次 三幣 亮/企画政策部 政策推進課 重田 友之
1台のドローンをマルチユースに。物流、農業、レスキューなどに対応するアタッチメントの搭載で、利活用のフィールドを広げていく
株式会社ニックス/代表取締役社長 青木 一英
自動配送ロボットが創る日本の未来物流課題・地域課題の解決へ向けて─
経済産業省 商務・サービスグループ 物流企画室/室長補佐 神田 浩輝 係長 濱野 佳菜
自動配送ロボットによる複数箇所への配送がルート最適化技術で実現
岡山県玉野市役所 公共施設交通政策課/課長 新 仁司 主査 甫喜山 昇平
![](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2022/04/kaihoushi08.jpg)
vol.8
物流産業における 持続可能な未来――。ドローンはその一翼を担う
国土交通省 総合政策局 物流政策課 物流効率化推進室長 小倉 佳彦
[インタビュー]
クリ“ミエ”イティブ圧倒的当事者意識をもって挑む三重県のあったかいDXのその先へ
三重県 デジタル社会推進局 デジタル事業推進課 新事業創出班/ 課長補佐兼班長 加納 友子 係長 伊藤 祐介
“一か八か”ではなく確かな情報をもとに判断を下す大和市消防本部の挑戦
大和市消防本部 警防課/主幹兼警防係長 消防司令 大内 一範 施設係長 消防司令補 小林 裕之
自治体×地元事業者が主体となる。これこそ地方DXの理想形
長野県伊那市役所 企画部 企画政策課/新産業技術推進係長 安江 輝
国内初・人口集中地区でドローン配送実証。イノベーションを支援し、ベンチャースピリッツで邁進する
新潟県新潟市経済部 成長産業支援課/課長 宮崎 博人
スマートシティ加賀構想と未来都市の「空の安全」を守るドローン管制プラットフォーム
石川県加賀市 政策戦略部スマートシティ課/松谷 俊宏
![](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2022/04/kaihoushi07.jpg)
vol.7
見据えるのは「ビヨンド・レベル4」ドローンが当たり前にある 社会のために
国土交通省 航空局 大臣官房参事官 次世代航空モビリティ企画室 成澤 浩一
[インタビュー]
ドローン特区指定に向けた歩みと純国産ドローン開発という2大構想の実現に向けて
宮城県大郷町/町長 田中 学
山間部、一級河川、リアス式海岸…圧倒的な自然に立ち向かう!佐伯市消防本部のドローン利活用
大分県佐伯市消防本部 通信指令課/消防司令補 山口 泰弘
ドローンによる社会貢献と業界のより良い発展に尽力し新しい時代へ
株式会社プロクルー/代表取締役 松本 茂之
欠航続くと鉛筆1本届かず…離島の生活・教育格差をなくすドローンの可能性
沖縄県竹富町 政策推進課/課長補佐 兼 商工係長 横目 欣弥
国内初!「ドローン×AI×遠隔情報共有技術」を用いた密漁等の監視・抑止システムが本格運用。海で培った最先端技術を多岐に活かす
株式会社エアーズ/代表取締役 小豆嶋 和洋
![](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2022/04/07b30401ed9c1c96441926b3e9ea6a97.jpg)
vol.6
空モビリティが日常になる風景が 産業構造にもインパクトをもたらす
経済産業省製造産業局産業機械課 次世代空モピリティ政策室 係長澤田隼人 コミュニティマネージャー小菅隆太 X 一般社団法人EDAC 事業推進部長渡邊研人
[インタビュー]
人材育成と普及啓発を二本柱に消防活動におけるドローン活用を推進
総務省消防庁消防・救急課 総務事務官 五十川 宏
曽於市loT実装計画から見るスマート自治体の出発点と展望
鹿児島県曽於市 企画課 企画政策係 係長 宇都 正浩
レベル4解禁社会実装に向けた兵庫県の中ローン先行的利活用事業」
兵庫県庁 産業労働部 産業振興局 新産業課情報・産学連携振興班 香山 和輝
消防防災体制を強化、都市部でのドローン利活用を推進していく
名古屋市消防局 消防部 消防課 計画係 消防司令補 上地 智樹
教育・エンターテイメント分野からドローンの普及と発展を支援
株式会社オーイーシー 執行役員 野崎 浩司
![](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2021/01/EDAC_5-1 表紙-1000x1368.jpg)
vol.5
鳥獣被害対策とICT、IoT、ドローン等の新技術活用の推進
農林水産省 農村振興局 農村政策部 鳥獣対策・農村環境課 鳥獣対策室 課長補佐 大山 雅司
[インタビュー]
ドローン前提社会・テクノロジー活用で社会課題の解決に挑む
神奈川県庁 政策局 未来創生課 課長 杉山 力也
ドローン×Hec-Eye 小谷村が実施した野生鳥獣調査の全容
長野県小谷村 観光振興課 農林係 主事 小林 慶士
『Hec-Eye』で実現する地方自治体の防災力強化 平時活用が実践の鍵
株式会社リアルグローブ 営業部 部長 渡邊 研人
空の道が最後の砦に。非常事態を想定し役場として万全な対策を
和歌山県印南町 総務課 主査 坂口 哲之
測量・建設の技術者が見る 最新テクノロジーの活用と未来
株式会社島内エンジニア 技術第三課 課長 中川 和樹
防災広場の平時利活用 せんごくの杜ドローンフィールド
貝塚市役所 政策推進課 参事 横井 伸朗/主査 辻本 健一様/主査 仮屋 良太郎
コロナ特別号 with / after コロナ時代のドローン新活用
EDACでは、年々広がりを見せるドローン等を活用した課題解決の取り組みを推進すべく、自治体や企業等によるドローン等先端技術の利活用事例を取材し、EDAC会員の皆様へ会報誌として展開しております。 この度、11名の識者によるwith / after コロナ時代における新たなドローンの活用や展望についてまとめた会報誌特別号を発刊いたしました。通常はEDAC会員の方にのみお送りしておりますが、新たなドローン活用の普及展開のため、今回は特別に下記のサイトよりお申込みいただいた方にも有料にてお送りいたします。
コロナ特別号 with / after コロナ時代のドローン新活用 販売サイト