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物流産業における 持続可能な未来――。ドローンはその一翼を担う
国土交通省 総合政策局 物流政策課 物流効率化推進室長 小倉 佳彦
![](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2022/04/0c76f7db1e6663914dc30675c274812f-scaled.jpg)
労働力不足や環境への負荷といった問題が顕在化している物流産業。特に地方では過疎地域への配送が地域課題として取り上げられている。物流諸課題の解決手段の1つとしてドローン物流の社会実装を進めている国土交通省 物流効率化推進室長の小倉佳彦氏に話を伺った。
【地方への想い】
地域課題を物流の面から支えていきたい
―小倉様のご経歴について教えてください。
物流効率化推進室長としては2年目になります。令和2年までは、宮崎県庁に4年間出向しており、そこでは主にクルーズ船の誘致や貨物の集荷といった港湾関係、地域の公共交通の維持を行う交通政策などに関わっていました。九州は首都圏等との距離が長く、物流においては鉄道、海運が非常に重要です。その中でもフェリーの運航の維持には熱心に取り組みましたね。
― 宮崎県庁でのご経験から感じたことはありますか。
私は北海道の出身で、それまでは九州とは縁がありませんでした。ただ、地方の物流問題、特に過疎地等で集落を維持しながらいかに持続的に物流を維持していくか、といったことには興味関心があり、その中でもドローンは、現在の物流課題を解決してくれる1つのツールだと感じています。
― これまでドローンに携わられたことはあったのでしょうか。
平成27 年に航空法の改正を担当した際です。航空法において、ドローンを「無人航空機」という形で、法律上で初めてその概念を位置づけた時でもありましたので、思い入れがありますね。ド
ローンに初めて触れたのもその時ですが、当時に比べてドローンの性能も大きく進化しているので、活用の可能性が広がっていると感じています。
【物流効率化推進室の概要】
ドローン物流の社会実装をより一層推進していく
―物流効率化推進室について教えてください。
令和3年6月に「総合物流施策大綱(2021-2025)」を策定しました。そこには、国として今後の物流が目指すべき方向性と重点的に取り組む物流施策を位置づけており、物流政策課ではこの
大綱に基づいて様々な施策を推進しています。
我々、物流効率化推進室では、モーダルシフトの推進や再配達の削減、物流分野でのドローン活用といった、物流業務の効率化に取り組んでいます。
― モーダルシフトとは。
貨物輸送の手段を、自動車から環境負荷の少ない鉄道や船舶等へ転換させる取り組みです。ある地点まではトラックで輸送、途中で鉄道・船舶などへ荷物を移し、その後は再びトラックで納品先へ…というように、貨物輸送の方法を転換することで、CO2 排出を抑えつつ、輸送を切り替えながら荷物を効率よく輸送する考え方です。トラッ
ク運送業界の働き方改革実現に向け、トラックドライバーに対する時間外労働規制が2024 年度よりはじまることで、労働力不足が問題視されており、その意味でもモーダルシフトに対する注目も高まっております。
― 物流施策において、ドローンはどのような位置づけでしょうか。
物流産業では、労働力不足や環境負荷をいかに低減するかといった問題があります。前述した課題において、ドローンは物流におけるこうした諸課題を解決できる1つの手段として注目されていますから、ドローン物流の社会実装は室としてしっかり後押ししていきたいですね。現在、各地でドローン物流の実用化に向けた実証実験が行われており、令和2年度には全国13 地域において実施されました。
― 実証実験はどのようなコンセプトで進めているのですか。
「何が何でもドローンを使う」わけではなく、「その地域にどうドローンを適合させていくか」が重要だと考えています。例えば、医薬品を届けるのに非常に時間がかかる地域であれば、その運搬をドローンで代替することで、どのくらい時間が変わるのかといった実証実験ができると思います。
自治体や事業者が連携して、ドローンの活用方法を考えていくことが必要です。
![空の産業革命に向け たロードマップ 2021 より抜粋。ドローン 物流においては、ま ずはレベル3飛行の 充実・実用化に向け、 今後も実証地域を増やしていく方針](https://www.edac.jp/wp-content/uploads/2022/04/a75ad4e3939a6f48c9c7f136057fb1f6-scaled.jpg)
― 全国各地で実証実験が行われておりまずが、理想的なドローン物流の姿は?
ある自治体では、ドローンと既存のトラックを併用しながら、速達性を重視しつつも確実に住民に届けるという物流を行っており、自治体・運航管理者・配送事業者の連携もきちんととれていて、物流政策上、素晴らしいなと感じました。また、災害時での活用も非常に重要で、道路が断絶した際に物資を緊急運搬できるような体制の構築も望ましいですね。複数自治体がまたがるような山間部では、自治体同士が連携して行えるようになると、ドローンによる物流効果がより高まると思います。
―現状の課題は何でしょうか。
一番はコストです。機体やドローンポート整備等の初期費用はもちろん、その後のランニングコストもあります。事業の採算性がネックとならないよう、新しい技術を活用しながら、コストをスリム化していく方法を考えていきたいですね。物流分野でのドローンはまだ実証段階という場合が多いため、自治体と連携事業者、国が一体となってモデルを創り上げていくことが必要だと感じています。
―環境面やエリアの課題もあります。
基本的なインフラとして当たり前にドローンを活用できるような環境が理想です。都市部ではまだ課題がありますが、地方ではトラックによる輸送の代替手段、とりわけラストワンマイル配送においてドローンが活躍できると期待しています。
一般社団法人EDAC でも熊本県南小国町での物流実証実験が予定されているとのことで、徐々に活用できるエリアを広げていくことができればと思います。
― コスト面での支援策について教えてください。
環境省と連携し「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業」という補助金を交付しています。ドローン物流に必要な機材や設備の導入・改修が補助対象になりますので、ご検討されている自治体や事業者がいらっしゃいましたら、お気軽にお問合せください。
【今後の展望】
ガイドラインは“気づきを与える初期マニュアル“である
― ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインについて教えてください。
ドローン物流の社会実装を進めるため、令和3年6月に、導入方法や配送手段などの具体的な手続きをまとめたガイドラインを策定しました。事業コンセプトの構築から運航時に必要な注意事項まで、ドローン物流に必要な事項を網羅的に掲載しているつもりです。これからドローン物流に取り組みたいと考えている自治体については、こちらのガイドラインを参考にしていただければと思います。
― 有人地帯での目視外飛行(レベル4)に向けたドローンの普及展開についてはどのようにお考えですか。
現時点では、ガイドラインはレベル3飛行を前提したドローン物流における初期段階のマニュアルとして、各自治体に気づきを与えながら、広く普及していきたいと考えています。導入期ではありますが、ドローン物流は全国での実証段階から確立されつつある分野になっているため、それを後押ししていくのが我々の役割でもあり、その要がガイドラインだと感じています。
また、レベル4を見据えた調査の実施も検討しており、レベル4で運航した際にCO2 排出の削減効果や、効率的な配送パターンなどを研究して、見える化をしていく予定です。そこができてくると、今よりもドローン物流のユースケースが増えてきて、様々な事業者や自治体が関心を持ってもらえると思っています。
― ドローン物流の導入を検討されている事業者や関係者に一言お願いします。
『ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン』は、「地域の課題をドローンを使って解決していければ」という想いを持って作りましたので、ぜひご一読いただければと思います。今後、内容の更新等もあると思いますが、高齢者の買い物支援など社会課題の解決のために、こうした配送形態もある、ということをぜひ知っていただきたいですね。今はどんな場所にもトラックが荷物を運んでくれていますが、物流業界の人手不足によりそれが当たり前ではなくなる時代も予想されます。新たな配送手段としてのドローンの活用をぜひご検討いただきたいです。
(取材日/(取材/ 2021 年9月1日))
▶ 国土交通省 総合政策局 物流政策課
物流効率化推進室
〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3
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URL: https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/ seisakutokatsu_tk_000024.html
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