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見据えるのは「ビヨンド・レベル4」ドローンが当たり前にある 社会のために
国土交通省 航空局 大臣官房参事官 次世代航空モビリティ企画室 成澤 浩一
ドローン等の小型無人機におけるレベル4(有人地帯における目視外飛行)が目前に迫っている。その実現にあたり、欠かせないのが安全基準や各種制度等の整備だ。これらの現状や展望について、空飛ぶクルマや小型無人機の安全基準や各種登録制度の導入に係る取り組みを一元的に担う国土交通省 次世代航空モビリティ企画室の成澤浩一氏に話を伺った。
「次世代航空モビリティ企画室」概要
2021年4月に新設国交省「次世代航空モビリティ企画室」
― 次世代航空モビリティ企画室は、どのような経緯で発足されたのでしょうか。
ドローンは「空の産業革命」、そして空飛ぶクルマが「空の移動革命」と言われており、今後技術の進展によって利活用がますます増大していくと見込まれ、どちらも社会に多大なるインパクトを与える成長分野であることは間違いありません。ドローンに代表される小型無人機等の飛行に関わるレベル4は2022 年度を目途に、空飛ぶクルマの事業開始を2023 年度目標に設定されており、これらを実現するため、それぞれのユースケースを汲み取り、実情に合った安全対策を講じながら利活用を図る必要があります。ただ、空モビリティの許可承認や様々な相談等については、これまでは航空局内で事務窓口が分散していました。それを一元化することで各ユーザーの利便性を図ろうと2021 年4月に「次世代航空モビリティ企画室」が発足し、22 名体制で稼働しています。新設の部署としては大所帯ですが、なにぶん着手すべきことが膨大ですから、さらなる拡充を予定しています。
― ドローンにおけるレベル4の実現に関して、次世代航空モビリティ企画室に期待される役割を教えてください。
第一のテーマとして“ ドローンに関する制度構築” があります。機体認証やライセンスなどの制度を作るための航空法の改正法案が閣議決定され、国会に提出されているので、この成立を目指すのが第一目標です。ただ、法律事項だけでなく基準、規則など細かいところをより具体的なものとして決めておかないといけませんから、基準や規則を今後どんどん検討していきます。
もう一つ大きなテーマがありまして、それは“ 各種申請のデジタル化“ です。2020 年にドローンの登録義務化に関する航空法の改正法案が国会で成立しております。施行は2022 年になります
が、登録の際の申請受付システム、発信システムに関して、電子申請・発行を予定しており、このシステムの構築もまた大きなミッションだと捉えています。合わせて機体登録やライセンスの発行のために電子申請ができるシステムも構築しなくてはいけないので、同時に進めていきます。
― 現在はどのような取り組みが行われている段階でしょうか。
まず、2015 年にドローンの許可承認制度ができました。それまではドローンに係る安全対策は未整備でしたが、これにより夜間飛行、空港周辺での飛行、物を運ぶ飛行、高度150m 以上の飛行
は特定飛行として個別の許可承認で飛行可能とする制度で、ここがドローンにおける安全管理のスタートといえるでしょう。
そして2016 年に、航空法とは別で小型無人機等飛行禁止法ができました。例えば官邸や皇居、国会議事堂、空港周辺は飛んではいけないということになっていて、排除できる法律です。こういったところが安全管理のベースとなり、2021 年1月の通常国会において、機体の安全性や操縦の技能に関する認証制度を柱とした航空法の改正案を提出し、航空法の改正に向けた手続きを進めている段階です。
―2020 年にはドローン所有者の登録を義務付ける航空法改正案が成立していますね。
ドローン所有者は登録時に取得した登録記号、要はナンバープレートのようなものを登録し、飛行時に表示することになります。ただ、ドローンは小型ですし、飛行中にナンバープレートを読み取るのは不可能ですから、「リモートID」システムを導入し、遠隔でドローンの登録番号を照会することを検討しています。また、飛行計画を申請する、事故が発生した場合は国土交通省に通報するなど、改めて法律で義務化し、安全管理を行っていきます。
利活用に欠かせないのは「安全の担保」と「社会受容性」
―2021 年度中に「機体認証」と「操縦ライセンス」の施行が見込まれていますが、改めてご教示ください。
まず「機体認証」に関しては、自動車の車検と同じ形で、ドローン1機ごとに国から機体認証を出す予定です。とはいえドローンは全国に何万機とありますから、メーカー側が申請を行い、国の審査に合格した場合に「型式認証」を出すことを想定しています。型式認証の申請については原産国やメーカーを問わず、審査を通して合格した場合に型式認証を出します。それにより、ユーザーが申請する個々の機体認証に関してはある程度検査を簡略化することができるようにする方向です。
―「操縦ライセンス」に関しては。
自動車免許のように、実地と学科試験に加えて身体検査を受けてもらい、国から発行します。ここは民間の力を最大限に活用する方向で、例えば国の審査に合格して登録された講習団体の講習を修了した場合、試験の一部、または全部を省略できる仕組みにしたいと考えています。自動車の教習所のようなものをイメージいただくとわかりやすいですね。試験機関に関しては試験事務を民間でできるよう一つの試験機関を指定する予定で、すでにドローンを業務で使っているような熟練の方に関しては指定の試験機関で試験を受け、合格すれば国から免許が発行されるようにします。
―目下の課題などはありますか。
次世代の技術に対して各種制度を構築しながら国としても安全を担保する一方で、重要なのは“ 社会が新しいものを受け入れるかどうか” です。
私たちは「社会受容性」と呼んでおりますが、いくら制度を整えても、多くの人が安全だと認識しなければ、社会で実装され、利活用していくことは不可能です。
これには、事業者の方々の協力が欠かせません。制度を遵守いただき、事故を起こさない、守っていただくというようなベースを作っていくことが大事だと考えております。そのため、制度設計にあたって一番重要なところはやはりドローンを使う方、作る方のユースケースを汲み取っていくことだと考え、ライセンスの基準、機体ミッションの基準を作る際には、実際に教育に関わっている方や機体の製造をしている方の意見を聞きながら、要はどのレベルで対応するのかを調整する必要があります。もちろん、関連部署との連携なども欠かせません。すでに調整を図っておりますが、継続して進めていきます。ドローンの技術の進歩は非常に早いため、変化に対して柔軟に対応するようにしていきたいです。
― ライセンスに関してもドローンスクールなど民間と提携されるということですが、他、関係部局との連携はどのように。
「型式認証」に関しての基準を作る上で、これまで愛知県のTC センター(航空機技術審査センター)で航空機の審査をしていた知見を活用する必要があると考えますし、審査においても同施設で実施する方向で進めています。福島ロボットテストフィールドでは空飛ぶクルマやドローン開発のためのテストが行われており、航空局の職員1 名を派遣して試験飛行の許可や現行の法制度の中でスムーズな開発ができるようアドバイスを行っています。これにより、技術開発の促進や同テストフィールドの活用にも貢献できると考えます。
ビヨンドレベル4を想定した空の未来展望
―2022 年がすぐそこに迫っている中で、実質的な普及展開に関してはどのようにお考えですか。
おっしゃるとおり、2022 年度を目指しているものの、先述した「社会受容性」の観点からいきなり都市部上空の飛行が可能かというと時期尚早だと感じられている方も多いでしょうし、私自身の見解も同じです。ですからまずは過疎地などでの物流分野が進んでいくのではないかと考えており、実際現在も各所で実証・実験が行われています。そこで安全だと理解が進んで、やっと都市部の物流が進んでいくのかなとイメージを持っています。
また、物流だけでなく警備やインフラ点検などの分野で、広がっていくであろうユースケースを吸い上げながら、発展の足かせにならないような仕組みを作っていくのが我々の使命です。ロードマップが敷かれていることはもちろん、次世代モビリティ関連技術の成長スピードに対応できるよう、我々としても技術の進歩に合わせたものを作り、基準を見直しながらスピーディーに動いていく所存です。
― 最後に、ドローンに関わる事業者や関係者に一言お願いします。
革命というのは、無限の可能性を秘めたものがもたらすのだと思います。その点ドローンはまさに産業の革命をもたらす次世代の希望です。今後の社会を、ガラリと変化させてくれるでしょう。
そのためには、安全なものだと理解していただく必要があります。現在、関係部局との連携を図りつつ、次世代航空モビリティに関する制度の構築・運用等を一体的に行っております。航空法改正が行われましたら、その基準に対してみなさんの意見を賜っていきたいですし、法律がきちんと施行されたのちには法律に基づいて運航してもらえれば幸いです。
そこが遵守されないと、ドローンをはじめとする次世代航空モビリティに関わる利活用がストップしてしまいかねません。スムーズな利活用のためにも、皆さんのご協力どうぞよろしくお願いいたします。
(取材日/ 2021 年4月27 日)
(取材日/2021 年4月27 日)
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